「伊南地域の夢」



伊南地域合併によせての提言―その4
2004年11月10日
小 原 茂 幸

▽今、人類は文明維新とも言うべき大きな過度期にさしかかっているといわれています。 大量生産、大量消費、大量廃棄の経済を続ければ地球が持たない、地球環境に大きな影響を与えかねない状態です。 また世界的に人口が増加する中で飲料水、食糧、エネルギーの不足が叫ばれています。 一方で日本の人口は2006年には減少をはじめますが、高齢者は2025年まで増加しつづけます。 更に東西の冷戦が終了後、中国の経済発展はめざましく、 ここ数年のITの発展に伴い、人と物と情報の流れが大きく変わり、 産業構造の大きな転換がなされようとしています。 そして日本の財政赤字は増加の一途をたどり、団塊世代が年金世代に突入するまでには、大きな決断が求められています。 そのような時代背景と私達が置かれている位置を考え、 次代を担う子供達のためにどのような環境を残していけるかは、この時代に生きる私達の重大な責務です。 今さえ良ければ、自分達さえ良ければ良い、という偏狭な考えではなく、 大局的見地に立って、地域が協力し合って、知恵と力を出し合い、協働して戦略を練る時代が来たと言えます。 まさに地域経営とも言うべきマネージメントが必要になっています。

▽一方、21世紀は環境の時代だといわれています。 すなわち農業や林業の時代とも言えます。 中央アルプス、南アルプス、その間を流れる天竜川とそこに注ぎ込む支流が作る河岸段丘。 四季の変化がはっきりしていて、箱庭的とは言え類まれなる美しい景観をもつこの地域は古来より農林業の盛んな地域でした。 中川の葛島に咲く桜は3月彼岸ころ、駒ヶ根高原に咲く桜は5月の黄金週間、さらに深山桜は5月下旬に咲きはじめます。 中川から見る南駒ケ岳の美しさ、飯島から見る南アルプスの勇姿、駒ヶ根から見る中央アルプスの神々しさなど、 美しい景観は私達の大きな財産です。 新市の基盤は、環境に主軸を置き、「日本一の環境都市」、そして「日本一美しいまち」を目指したいと考えます。 すなわち、食とエネルギーの自給自足、廃棄物の地域処理、 そして美しい景観都市を目指し、自然と調和のとれた循環型社会の方向性を探り、 今、人類が抱えている環境問題を解決すべく、そのモデル地域としてのシステム構築を目指したいとおもいます。

▽1つには、日本農業が置かれている状況を打破すべく、 花(ガーデニング)と食糧(ファーミング)を組み合わせ、美しさと美味しさと安全を融合させるべく、 この地域のブランドを作っていきたい。 また、この地を訪れる交流人口を増やす事によって、 生産者と消費者を直結する付加価値の高い農業に転換し、 魅力ある農業としての後継者確保と、雇用の確保を図りたい。 さらに信州大学農学部、上伊那農業高校と連携し、 生物系廃棄物を利用した有機肥料製造所、味噌、醤油から酒造に関わる醸造研究所、公園機能としての植物園、 さらには、この地にガーデナーの養成学校をつくり、環境やガーデニングのメッカとしての施設配備を行いたい。

▽2つ目には、エネルギーの自給を目指すべく自然エネルギーの開発を目指します。 山梨、南信州は年間日照時間が最も長い地域であり、太陽光発電には効率のよい地域です。 中央アルプスから流れ下る豊富な水とその高低差を利用したミニ水力発電。 農業と林業から供出されるバイオマスを利用した新エネルギー。 この分野はベンチャー企業の活躍するところでもあり、 これらに関する産業を発展させるべく、研究機関を誘致し、行政のバックアップの元に、 将来的には新エネルギー産業のメッカとして発展させ、雇用の創造を図りたい。

▽3つ目には、まち造りは人作りだといわれます。 社会的な財産としてこの地域に、どれだけ能力を持った市民がすんでいるか、 どれだけ多様性のある人々が暮らしているか、あるいは活力ある人々がどれだけいるかが問われています。 とりわけ若い世代に魅力あるまち造りが求められています。 この点から、中心市街地の活性化は、単に地域消費者に留まらず、観光客を含め地域外からの求心力を高め、 まちとしての機能をレベルアップしていきたい。 たとえば、手仕事(クラフト、有機野菜、農業加工品等)と福祉の町作りを行って行きたい。 まちは本来、人と物と情報が行き交う場所でした。 手仕事と歩いて楽しめるまち造りを行い、地域の生産物の集積地としての、本来の市場の活気を取り戻したい。 駒ヶ根インターは年間60万人以上が利用しています。 3市町村のそれぞれのまちを繋ぎ、多様性をネットワークしていきたいと考えます。

▽4つ目には、福祉のまち造りですが、 現在駒ヶ根には長野県看護大学、長野県駒ヶ根市、長野県西駒郷の県の福祉関係施設が3施設あります。 更に伊南行政組合立の伊南総合病院を加え、これに医院、診療所などの医療機関、 そしてデイサービスセンター、高齢者施設、宅幼老所などを連携させ、 更には保健センターを組み合わせる事によって、地域医療のモデル地域が可能となると考えます。 少子高齢化社会では、やがて年金制度、介護保険、そして医療保険の破綻が予測されています。 農的なるものを基本にして、健康で長生きできる社会を目指したいと考えます。

▽5つ目には、文化、教育関係ですが、食農教育、環境教育を中心にして時代を担う子供達に実践的な体験の場を提供したい。 また、都会に住む人々の体験学習の場としての施設整備を行い、交流を深め文化を育みたい。 そして環境都市としての情報発信基地として様々なイベントを立ち上げ、 その際には3市町村の持つそれぞれの文化会館を会場にして、 サンタフェの複雑系研究所の取り組み同様、地域内での多様性を組み合わせた運動を起こしたい。

▽以上、行財政の改革、スリム化はもちろん推進するものとして、 国の体力がある内に地域の基礎体力を強める方策を取るべきだと考えます。 そのためには、「環境」を中心に据えて、この地域の持つ多様性を組み合わせ、 融合させて、方向性を整え、将来像を明確に提案する事によって築かれるものと考えます。 この市域で育った子供達が、県外に進学した後、帰って来られるような環境整備を行いたい。 特に雇用に関しては最大限の力を注ぐべきです。

▽財政問題は雇用問題であり、雇用は最大の福祉に繋がります。 美しさには人を惹き付ける力があります。 「日本一美しいまち造り」を目指す事により、交流人口が増えれば雇用が発生し、定住人口も増えて行きます。 21世紀は地球規模で考えて地域で行動する時代だと言われています。 この地域の持つそれぞれの価値を再確認し、今置かれている私達の立場を考え、 やがては南プロバンスならぬ「南信州」でブランドを築く時代の礎になるべく、 力を合わせて前進する道を模索したいものです。(S.Ohara)











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