地域の生き残りをかけて



伊南地域合併によせての提言―その2
2003年5月14日
小 原 茂 幸

■合併してできる新しい市に望む事
1. 全国の人が、四季折々に訪れてみたい、住んでみたいと思うまちづくり
2. 安全で安心な住環境の整備と、「美しいまち」づくり
3. 21世紀を生き残るための雇用の創造と産業基盤の整備
4. 人づくりのための行政支援、専門学校(市民大学)等の設立
5. 民・産・官・学の連携
6. ボランティア、NPO、各種サークルなど、コミュニティー活動支援
7. 環境問題に対処したまちづくり
8. 地域自給(食、エネルギー、ごみ処理)システムの構築
9. マネージメントの活用と専門家(コンサルタント)の支援
10. 多様性をネットワークすること
11. 様々な活動のベクトルを将来に向けて同方向に調整する必要性
12. 高度情報化社会のメリットを最大限利用し情報インフラに関しては都会に負けないものを構築する。

■合併やまちづくりについて
1. 地球的規模で考えて、地域で行動する時代です。 21世紀は環境の時代だといわれています。 環境とはすなわち農業や林業の時代です。 水不足、食糧難、環境破壊、少子高齢化などの危機を乗り越えるためには、 「三人寄れば文殊の知恵」で少数で戦うのではなく、 より多くの人々が持つ知恵と能力と情報力を合わせ、 小異を乗り越えて大同で結束する必要があります。

2. 21世紀、人類がおかれている立場を考えると同時に、 日本経済が置かれている立場も考え、産業振興の方向性を模索する必要があります。 1900年、産業人口の8割は農業従事者でした。 2000年農業従事者は8%以下ですが、主食である米は過剰生産の状況です。 2000年から2100年にかけて、小売業の形態は大きく変化する可能性があります。 1960年台から2000年にかけて日本は世界の工場でした。 しかし今、中国が世界の工場になりつつあり、 今後、よりコストの安いアジア諸国に製造業は移転していく事でしょう。 従って、財政の確保、雇用の創造の方法も必然的に変わらざるをえません。 地域の活力は、そこに住む人々の能力におうところが多いと感じます。 有能な人々を育て、惹きつけるまちづくりをしたいものです。

3. ミニニューヨーク、ミニ東京ではない発展の方法。 大量生産、大量消費、大量廃棄のシステム自体が成り立たなくなりつつあります。 大都市に集中させる一極集中方式は、 神戸大震災、9.11N.Y.同時多発テロなど、 大きな脆弱性を持ち合わせています。東京で3日停電になれば大混乱です。 地方の強みを生かし、食(職)とエネルギー、廃棄物処理において地域自給システムを構築し、 安全な食の確保のためにも地産地消システムを模索したいものです。

4. 人間は生物の一種です。 地球上には様々な生き物がお互いに共存、共生しながら生きています。 自然破壊型の生き方や、自然界に無い廃棄物を出す化石燃料に頼った生き方を改め、 自然のサイクルに適合した環境を創造する必要があります。 さらに人類の幸せ感を消費型社会から体験型社会に転換する事が求められています。

5. 私達が住む伊南の地は、幸いにして類稀なる景観を要する地にあります。 駒ヶ根市には北原市長の時代より「田園都市」の概念がありました。 この地域の地場産業は兼業農家かもしれません。農業は環境産業です。 「美しいものには人を惹きつける力がある」といいます。 たとえば新市全域を公園化し、「日本一美しいまち」づくりを目標に掲げ、 地域の特性を活かしたまちづくりをする事によって、 「全国の人が、四季を通して何度も訪れてみたい、 住んでみたいと思うまちづくり」をしたいと考えます。 そのために様々な社会活動を同じ方向に整理し、 魅力ある住環境を創造したいと考えます。

6. 経済が混迷を深めていく中で、 「自分達(自分の所属する業界、地域など)さえ良ければいい」 「今さえ良ければいい」という考え方が多くなる傾向にあります。 私達は、同時代に生き、同じ空気を吸っている仲間であり、 ひいては宇宙船地球号に乗る同じ乗組員です。 この世界を構築する一人なのだという観念が欲しいと感じます。 さらには次代のために、 少子化する子供達に何を残せるのかという意識が大切だと思います。 かつて、歩いて30分、自転車で30分が共同体の一単位であったとするならば、 現代の自動車で30分は、同じアイデンティティーを持つ運命共同体です。 4市町村の持っている特性を活かし、 多様性を再確認するとき、相互に連関し、 ネットワークを組む事によって、二重にも三重にも、 より強固な社会基盤が築けるものと考えます。

■合併問題によせて
▲二つのアルプスを望む伊那谷は四季を通してやすらぎと潤いを与えてくれる地域だと感じます。 ところが今、この地に生まれた子供たちが、大学を卒業して故郷に帰りたくても、職場がなく、 戻れない時代になりつつあります。
経済と情報のグローバル化の中で、産業構造が大きく変わろうとしています。 「安全で快適な住環境の創造」を最大の目的とすれば、雇用の創造こそが、 これからの最大の課題だと感じます。そのための基盤整備が必要な時代です。 市町村合併も、地球的規模で考えて地域で決定する時代ではないでしょうか。
▲21世紀は環境の時代だと言われています。 環境の時代とは、すなわち農業や林業の時代です。 農業や林業を基盤として、食糧とエネルギーを確保し、 美しい農村風景を創造する事によって安らぎの空間を創造する事が可能となります。 駒ヶ根市にはかつて「田園都市構想」の概念がありました。 物を生産して財政を賄うことが困難になりつつある今、 人を集客して雇用を創出する方法を模索する時が来たと考えます。 「美しさ」には人を惹きつける力があります。 恵まれた自然環境の中で、四季を通じて「美しさ」を演出する事によって、 知名度を高め、一年を通して集客力を向上させる仕組みが考えられます。 人が集まれば活気が生まれます。 さらに食とエネルギー及び廃棄物に関して地域自給、 地域処理の循環型社会の構築が可能になります。 大量生産、大量消費、大量廃棄のシステム自体が問われている今、 地方が生き延びる道も変わらざるをえません。 そのためには地域において、共通の目的を持ち、 農業、工業、商業などの方向性を整え、 駒ヶ根市だけでなく、飯島町、宮田村、中川村など、 エリヤを拡大する事によって、多様性が広がり、 ネットワークを組むことによって、 地域全体での活力の向上を図ることが可能となります。
▲地域整備を考えるとき、 1.自然環境、2.交通環境、3.医療環境、4.教育環境、5.ショッピング環境が重要なポイントだといわれています。 しかし、雇用がなければ、生活の安定が図れません。 魅力的な住環境を創造する事によって、人を集客する力が生まれ、 新たな雇用を生み出す。 時代の要請に応じて生産物に付加価値を加え、 さらなる雇用を創造していく。 合併による行政のスリム化と平行して、 自立した財政を構築する手段を明確に打ち出すことが必要です。
▲一つのテーブルに祖父母が居て孫が居る。 かつて当たり前の生活の姿が見えにくくなりました。 しかし文化は親から子へ、子から孫へと継承され、創造されるものでなくてはなりません。 地域造りは人造りからといわれます。 地域における民・産・官・学が協同し、地域のアイデンティティーを見なおし、 多様性をネットワークすることの中に、21世紀を生き延びるキーワードがあると考えます。


■駒ヶ根市全域自然歴史公園化構想(参考資料)
▲美しい町に住みたい。たとえば、公園の中に住居が有り、公園の中に田畑が有り、公園の中に工場が有り、 公園の中に商店街があるまち。 たとえば、川を再生し、森を作り、林を再生し、並木を作り、四季折々に花の咲く木を植えたい。 実の生る木を植え、野鳥を呼びたい。 たとえば茅葺き屋根の家や水車小屋が似合う風景を再現したい。 主食である米の確保と国土保全のために、日本の原風景である水田を維持するとともに、 癒しの風景を創造したい。町全体を花で飾りたい。 四季折々に「感動」する場を創造したい。
▲美しい公園のような環境に住みたい。美しさには人を惹きつける力があります。 (可愛らしさには人を癒す力があります。) 人が集まれば出会いがあり、活気が生まれます。新しい産業が生まれます。 四季折々に訪ねてみたい、住んでみたい場所を創造する事によって、 社会資本も充実してきます。通年通して人を呼ぶ仕組みを考えて見ましょう。 物を生産して雇用や財政を賄うことが難しくなりつつあります。 製造業が日本から中国等へ移転していく時代です。魅力的な環境を創造し、 人を呼んで財政を潤すことに、今一度目を向けてみましょう。
▲20世紀が都市の時代だったとすれば、21世紀は地方の時代だと思います。 現在の地球の人口60億人。やがて人類は水不足の時代を迎え、食糧難の時代を迎える事でしょう。 私達はそれぞれの地域において、 「食とエネルギーの自給自足」を図りたいものです。 この地域に住む人々の食料は、この地域で賄う。 「地産地消」が理想です。 この地域で消費されるエネルギーはこの地域で調達する。 ミニ水力発電、太陽光発電、バイオマスなど。 自然に負荷を与えない循環型システムが求められています。 安全な食と安全な水ときれいな空気は、豊かな自然からの贈り物です。 現存する豊かな自然環境を活用すると共に、失われた自然環境を再生し、 住環境そのものが自然と人間が共生し合う場として、駒ヶ根市全域を自然公園化したいと考えます。
▲人類が生きていくためには「呼吸」と「飲食」は不可欠です。 人類は地球上の生物の一種であり、他の生物との共生を抜きにしては生きられません。 化石燃料や農薬、抗生物質や成長ホルモン剤などを必要とした時代から、 自然の循環のままに生きられるシステム作りが求められています。 それは同時に消費型社会から体験型社会への転換も求めています。 「他人より大きな家に住みたい。他人より高級な車に乗りたい。 他人と違ったものを持ちたい。」「モノ」を所有する事によって得られる幸福感には限りがありません。 「モノより時間」、「お金より思い出」。 音楽、スポーツ、芸術、旅、・・・。 「食」と「農」と「芸(技)」が有機的に一体化した街を創造し、 駒ヶ根市全域を歴史公園化できたとしたら、資源消費型社会、 環境破壊型社会から決別できるのではないでしょうか。 
▲街造りの主役は、そこに住む一戸一戸の人々です。 私達の街をどうするか、一つの方向を定め、一定のルール(条例)のもとに、 街造りの夢を共有していきたい。 この街に住む人々の幸福感をもって、この街を訪れる人々を幸福にしていきたい。 私達の世代でできなければ、子供たちの世代に。 子供たちの世代でできなければ孫の世代に、この夢を託したいと思います。(S.Ohara)









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