長野県の未来によせて


2003年1月20日
小 原 茂 幸

21世紀は環境の時代だと言われています。
人口爆発、地球温暖化、飲料水の不足、食糧危機、森林資源の枯渇、環境破壊など、
人類の歴史上初めて直面するものばかりです。
また、文明自体も、国際化、情報革命、遺伝子組替技術、大量破壊兵器、
さらには原理主義など、
過古に例を見ない状況で、
地域と世界が瞬時にして影響を受ける時代でもあります。
そして本年、世界情勢は米国とイラクとの緊張関係の中で明けました。
日本経済はいまだに1990年代の負の遺産に苦るしんでいます。
地方における地域経済は更に活力を無くし、
個人生活においても明日の期待が持てない状況です。
2003年は様々な場面で正念場を迎える年になると考えます。

そのような状況下で、今の日本に求められているのは、
「生き方」に対する「夢」ではないでしょうか。
理想的な生き方、理想的な生活スタイル、
「自分たちはどういう生き方をするのか、したいのか?」、
「子供たちの世代に何を受け継がせたいのか?」、
「安全な社会システム構築のためには何が必要なのか?」等など、
「私達の生き方」が問われています。
すなわち、自分達の進む方向が、「日本の進路」が問われています。

その答えのヒントは「環境」の中にあるような気がします。
すでに「宇宙船地球号」の概念が生まれて長い時間が経ちました。
ますますこの船の住み難さは増長されています。
21世紀人類が生き延びるためには自然エネルギーの活用と、
自然のサイクル(循環)に沿った生き方、
さらには多様性を認め、
ネットワークを組むことが必要なのではないでしょうか。
大量生産、大量消費、大量廃棄のシステム自体が問われています。

資源が無く、市場が限られる日本は、貿易立国です。
「物造りの日本」であったはずです。
その日本から製造業が離れつつあります。
今の日本は、「強い円」という過去の遺産の上に成り立っています。
製造業を、環境自然循環型産業に方向を変え、
食糧とエネルギーを自給自足できる体制にしなければ、
日本の真の独立はありえません。
更に、雇用をどうするのか、これが最大の問題です。
まもなく、人類史上初めて体験する少子高齢化社会が到来します。
その答えも、環境の中にあるような気がします。
日本の高度経済成長を担ってきた要素には、
東西の冷戦構造の背景のもと、
勤勉で旺盛な質の高い労働力があったからだといわれています。
売れるとなれば、三交代制で寝ないで働き、
あらゆる時間を犠牲にして物を作り続け、売り続けました。
日本人はエコノミックアニマルとさえいわれました。
家族との時間、気の合った仲間達との時間、
余暇の時間、子育ての時間、恋人達との時間、読書の時間、瞑想する時間、
仕事以外の時間をことごとく犠牲にして手に入れた現代の日本です。
もしかしたら、子供達の学力低下、学習意欲の低下、
無気力、無関心、無責任、無感動は、これらの反動かもしれません。

これからの製造業が生き残る道は、
量を多く生産する事によるコスト低減より、
付加価値の高い製品を生産することだといわれています。
であるならば、
一人一人の労働時間を短縮し、
雇用を分かち合うワークシェアリングにより、
雇用の均等性を図ることも「環境の時代」には大切な要素になりつつあります。
仕事以外の時間を創造的な時間としてとらえ、
更に付加価値の高い商品を創造する原資とすること。
新しい発想、独創的な発想は、多面的な体験から生じるものです。
消費型社会から体験型社会への転換にも合致するものです。

環境の時代とは見方を変えれば、
すなわち農業や林業、水産業の時代です。
まさに、かつて自然環境と融合しながら生きてきた長野県民の時代です。
長野県を、
人類の最先端技術を自然の循環(サイクル)に合わせた場として構築し、、
世界で最も自然と融合し、人類の最先端の文明を享受するエリアとして、
情報発信していく場にしたいと考えます。
田中知事が再選され、本年4月には県議選が行われます。
他人事ではなく、傍観者でもなく、
一人一人がこの世界を構成する一員である事を自覚し、
私達の進路は、私達自体で話し合い、検討し、決めたいものです。

地球的規模で考えて地域で行動する時代です。
歴史法則から、今を生きる我々の使命を考える時です。
20世紀が都市の時代であったとすれば、
21世紀は地方の時代です。
250年の歴史を持つU.S.A.の「力とイベント」による政策ではなく、
数千年の歴史をもつ「心と和」による政策が求められています。
U.S.A.を基準にしたグローバル化の波の中で、
地域のアイデンティティーが、
欧州で、アジアで、日本の地方で見なおされつつあります。
「今さえ良ければ」、
「自分たちさえ良ければ」ではなく、
宇宙船地球号の乗組員として、
次代を担う子供たちにどういう「環境」を残して行くのか。
地球における生命体の食物連鎖の頂点に立つ人類が、
環境という壁を意識した21世紀。
最先端の位置にいる者としての、決断と実行が、
今、私達に課せられています。


(「フォーラム改新への提言」に一部加筆)







目次へGO BACK

お読みいただきまして
たいへんありがとうございました。
このページをご覧になった
ご意見、ご感想などお気軽にお寄せください。

PINE HILL Mail: ohara@komagane.com

(C)Shigeyuki Ohara,2003 All Right Reserved