21世紀は女性の時代


2001年10月15日
小 原 茂 幸

昨年の冬、通勤途中にある天竜川の河床工事が行われていました。
渇水期である冬に川の流れを変えるべく、ブルドーザーが3台。
たった1日で天竜川を堰き止めてしまいました。
その昔、人力を頼りにシャベルやジョレン、
もっこ担ぎに頼った時代では考えられないことです。
渇水期の期間内に工事をするためには、
数百人数千人の人足が必要になったことでしょう。
まさに文明の力です。
しかも、重機を運転するオペレーターはよほどでなければ汗をかくこともありません。
腕力や体力に頼って仕事をする事が少なくなりました。
機械が重労働を軽減してくれつつあります。
パワステアリングやエアコン等、機械も扱いやすく改良されてきました。
大型ダンプや重機の運転に女性の姿が見えるようにもなりました。
産業構造の変化が、女性の時代を推し進めています。
腕力の時代から感性の時代に移りつつあるのです。
キーボードを打つのに力は必要ありません。

一方、「心の時代」といわれて、久しい年月が経ちました。
「お金より時間」「物より思い出」というすばらしいコピーがあります。
物の時代から心の時代へ、感性の時代がやってきたのです。
作れば売れた時代、大量生産大量消費の時代が終わりつつあります。
デザインや質感、ブランドイメージ、独自性、オリジナリティ、
感性が問われる時代になりました。
男性の領分から女性の領分に移りつつあるのです。

日本海を望む、古くからの温泉地での新ホテル建設のコンセプト。
「五十代のお茶をたしなむ女性が泣いて喜ぶホテルにしたい」
消費の動向を女性が握りつつあります。
男子一生の仕事としてのマイホーム造りも女性が主導権を握りつつあります。
小型車は元より普通車にあっても、さらにワゴン車も、
女性が運転する事を意識して造られています。
女子高校生が消費のトレンドを左右する鍵を握っています。
新商品開発には女性を意識せざるを得なくなっているのです。
年末年始休業や夏季休暇はともかくとして、
お花見だ、紅葉狩りだと全国を行脚する女性の多いこと。
今の日本で一番元気が良いのは、
二十歳前後の女性か五十代以上の女性かもしれません。
特に子育てを終えた女性のお金と時間が日本の個人消費の一翼を担っています。

以下は一般的な概念です。
セクシャルハラスメントを気遣いながら記してみます。
女性はやすらぎを求めます。居心地の良さを求めます。
女性はきれい好きです。
女性は好奇心が強く、ファッションにこだわり、食にこだわり、
結果、値段にこだわります。そして、移り気です。
女性は計画的です。スケジュール帳を手離せません。
女性は社交的です。グループで行動する事が多いものです。
話好きです。旅行に行くと女性たちは賑やかです。
話すか食べるか、静かになったなと思うと寝ています。
女性は複雑な事は苦手です。メカには弱いようです。
女性には解かりやすくないと売れません。
男が余分な金を持てば、趣味かばくちか飲酒に使う事が多いものですが、
女性、特に母親は自分のものより子供のもの、家庭のものを優先する傾向があります。
女性は安定を求めます。
十月十日、お腹の中に新しい命が宿っていれば、安定と平和が必要です。

日本は少子高齢化社会に突入しつつあります。
生産人口のマンパワーが不足してきます。
男女雇用機会均等法が施行され、
そして男女協同参画社会の提唱です。
「戦後、女と靴下は強くなった」と言われたことがあります。
女性が社会進出をして、現金を手にする事が出きるようになって、
意識は大きく変わってきました。
家長のために奉公するしかなかった時代から、
自分で自由に使えるお金を手にできる時代になったのです。
産業構造の変化が社会構造の変化を呼び、
「三界に家無し」と呼ばれた女性が、一人でも、
シングルマザーでも生きられるようになってきました。

年々女性が強くなります。
年々男性が控えめになってきました。
いつしか小学校の児童会長、中学校の生徒会長を、
女性が務めるケースが多くなりました。
この夏に訪れたフィンランドは女性の首総、
首都ヘルシンキは女性の市長でした。
新しい命を育む性としての女性が活躍を始めました。

闘争と戦争に明け暮れた20世紀。
我が子を産み、育てた母親の心は、平和と安定です。
「私はどうなっても良いから、この子だけは何とかして!」という
母性が平和と安定を求めています。
これは無限の成長神話の時代から、
宇宙船地球号の乗組員の一人としての人間につきつめられた、
限りある社会の中での共生を模索せざるを得ない時代に到ったことを、
認識することでもあります。
誰かが必要以上に多くを占有するならば、
誰かが生きる事にも不足を生じるのが世の常です。
そこに軋轢が発生します。

大量生産大量消費は大量のゴミや二酸化炭素を発生し、
しいては地球温暖化や環境破壊の原因になっています。
自然と対峙するのではなく、自然との共存を模索する時代です。
殺伐としたコンクリートジャングルから、
森と緑の癒しの空間が求められています。
巨大破壊兵器や高度殺戮兵器はたくさんの母親の心を涙で覆っています。
敵も見方もいかなる兵士も、母親以外からは生まれてこないのですから。

20世紀は戦争の世紀と呼ばれました。
21世紀は子を持つ母親の感性に期待します。







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